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Chlamydia
 
Obligate intracellular pathogenic bacteria.

   Chlamydiae are Gram-negative and obligate intracellular parasitic bacteria responsible for a wide range of diseases causing severe clinical and public health problems. Chlamydia pneumoniae is known as a leading cause of respiratory tract infections and its persistent infection has been shown to relate to atherosclerosis in the last two decades. Chlamydia trachomatis is the most common sexually transmitted bacterial pathogen worldwide, and its chronic infection increased risk of ectopic pregnancy, chronic pelvic pain and infertility. Chlamydial ways of killing host cells tenderly must be attributed to molecular mechanisms, by which Chlamydia modifies intracellular environments to scrape off nutrients but maintain the integrity of the host cells. One of the most focused topics is the prevention of the host cells from undergoing apoptosis induced by intracellular stress for its long-term multiplication or persistence. The main aim of this review is to summarize the data illustrating persistent infection and host apoptosis regulation by Chlamydia.

 

クラミジア

 クラミジア科細菌は主に哺乳動物や鳥類から分離されており、現在認知されている1属9種全てが偏性細胞内寄生性細菌である。特に、肺炎クラミジアは宿主域が広く、ヒト以外にカエルなどの両生類や、カメやヘビ、イグアナ、カメレオンなどのは虫類、コアラ、ウマからの分離報告がある。ヒトへの感染が問題となるおもなクラミジアとしては表1に示すように、性行為感染症クラミジア(Chlamydia trachomatis、以下、トラコマティス)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)の3菌が挙げられる。トラコマティスは世界中で性行為感染症の最も重大な原因菌であり、その慢性感染は骨盤内炎症性疾患や不妊の原因ともなる。また、眼結膜炎の起炎菌であり、発展途上国ではその慢性感染が失明の重大が原因ともなっている。オウム病クラミジアは鳥類では不顕性であることも多いが、ヒトでは感染鳥類の排泄物や羽毛の中の菌の吸入により感染し、間質性肺炎などオウム病の原因菌となる。肺炎クラミジアは1989年に同定された新しい細菌種だが、多くの国で成人の50%以上が抗血清を保有する風邪や肺炎の原因菌で、その持続感染は喘息や動脈硬化などの発症・増悪に関与する。

 

クラミジアの生活環

 細胞内寄生性であるクラミジアは、感染宿主細胞内環境と外環境で異なる形態・機能を示し、特徴的な二相性生活環を持つ。まず、代謝能は持たないが感染性のelementary body (EB)が宿主細胞に定着し、宿主の食作用や飲作用によって受動的に宿主細胞に取り込まれることから感染が開始する。そのEBの大きさは約0.2 ~ 0.4 µmで、細胞質には凝縮したヌクレオイドと大量のリボソームを含み、内外2重の膜に覆われている。ペプチドグリカン層は電子顕微鏡では観察されない。感染後約2−3時間で、食胞中のEBは、感染性は持たないが増殖性を有する大きさ約0.5 ~ 1.0 μmのreticulate body (RB)へ形態変化をする。この時、食胞膜はクラミジアの封入体膜タンパク質によって封入体膜として再構築される。その封入体膜はリソソームの融合を阻害し、ゴルジ体からの小胞によってエネルギーや膜成分の供給を受ける。RBは2分裂増殖を行い、封入体あたり約1000菌体数にまで増殖する。それに伴い封入体も巨大化し、宿主の核と同等の大きさになる。増殖阻害などのストレスがない場合は、RBは再び形態変化を行いEBとなる。EBは、宿主細胞および封入体の崩壊に従って放散されるか、封入体が出芽するかのように宿主細胞から放出され、次の感染に向かう。性行為感染症クラミジアではこの感染の1サイクルが約2日間、肺炎クラミジアの場合は約3日間である。

Chlamydia pneumoniae

 

An obligate intracellular pathogenic bacterium.

(これまでの研究成果)

 肺炎クラミジアは一般的な風邪の起炎菌であり、その持続感染が動脈硬化症の原因となる医学的に重要な細菌である。しかし、肺炎クラミジアはウイルスと同様に偏性細胞内寄生性で、その研究には遺伝学や生化学手法によるアプローチが困難である。そこで、肺炎クラミジアのOmics解析を実施し、肺炎クラミジアの宿主特異性や病原性、ゲノム進化、宿主細胞との相互作用の解析を進めることにした。本応募者がクラミジアの研究を始めた2001年頃までに、ヒトに高い病原性を示す肺炎クラミジアや性行為感染症クラミジアの全ゲノムDNA配列が発表されていた。そこで、ヒトに低病原性であるネコ・クラミジアの全ゲノム配列を決定し、宿主特異性への関与が示唆される膜タンパク質遺伝子などを明らかにした。

 一方、クラミジア感染の抑制に働くインターフェロンの作用起点であるクラミジアのトリプトファン代謝遺伝子群に関して、ネコ・クラミジアではその遺伝子が完全に揃っているが、肺炎クラミジアや性行為感染症クラミジアでは不完全であった。そこで、様々なトリプトファン誘導体を調べたところ、脳内ホルモンであるメラトニンやセロトニンがクラミジアの感染抑制に有効であることを発見した。さらに、DNAマイクロアレイを用いて感染周期特異的な遺伝子発現の全容を明らかにし、特に感染後期に高い発現が見られたset遺伝子の産物がクラミジアのゲノムDNAの動態を制御することを証明した。

 クラミジアが人体に侵入した場合、マクロファージによって貪食され産生されたNOによって殺菌される。しかし、クラミジアは一定の確率でその殺菌を回避するが、その時クラミジアが宿主PI3Kのシグナル系によるNO生産を撹乱することを示した(原著論文12)。また、クラミジアが上皮細胞などに侵入できた場合には宿主アポトーシスを抑制し免疫系から逃れるが、意外にもアポトーシスを推進する2つの因子Apaf-1とCaspase-9が、クラミジア感染に関して全く異なる寄与を行うことを発見した。現在も、肺炎クラミジアと宿主との相互作用の解析として、メラトニン受容体およびアポトーシス因子の解析を進めている。

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